About Care 褥瘡予防について

褥瘡予防とは

皮膚や軟部組織の壊死である褥瘡。その原因は同一部位への継続的な圧迫です。ベッドマットや車いすなどに身体の一部が接触している状態で、圧力や剪断力(せんだんりょく)が一定時間加わると血流が阻害され、褥瘡が生じます。特に寝位置修正時や背上げ、体位変換時には皮膚へのずれや摩擦が生じやすいため、注意が必要です。また栄養不足や不衛生な環境も、間接的な原因となります。
褥瘡には好発部位があり、基本的には骨のランドマークとなる部位、他の表皮より出っ張っているところに生じやすい傾向があります。仰臥位(ぎょうがい)では仙骨(せんこつ)や踵(かかと)、後頭部や肩甲骨に発生しやすく、側臥位(そくがい)では大転子(だいてんし)や腸骨に多く見られます。好発部位への除圧は褥瘡予防においてとても重要なポイントです。

褥瘡は突然できるものではありません。できはじめから悪化するまでにはステージがあります。

ステージ1…発赤(皮膚の損傷なし)

ステージ2…表皮の欠損(皮がむけて浸出液が出る、水疱ができるなど)

ステージ3…皮下脂肪の露出、ポケット化(皮膚が完全にむける、見た目より中に広く穴が開く)

ステージ4…筋肉・骨の露出(脂肪をつきぬけ筋肉や骨に触れることができる)

ステージを知っていると、おむつ交換や入浴介助をしていて、発赤や皮向けを見つけたときなどに褥瘡のなりはじめだと気づけて、早めの対策が打てるようになります。

予防方法

◇体位変換と体圧分散寝具

●体位別で褥瘡予防のポジショニングを考えてみましょう。
【側臥位のポジショニング】
支持面積が小さくなる側臥位では、その分、圧が集中しやすいため特に注意が必要です。90度、60度、30度で圧の違いを見ると、90度では支持面積がもっとも小さく、大転子や腸骨など骨突出部への圧が大きくなります。逆に角度が小さくなるほど支持面積が大きくなり、骨突出部への圧は軽減します。したがって、もっとも褥瘡リスクが軽減できる30度を意識するとよいでしょう。また、30度では骨突出部のない臀部(でんぶ)で体重を支持できることも、褥瘡予防につながります。

具体的には、側臥位の場合、まず骨突出部の圧を確認し、体位変換を行うことから始めます。クッションを利用し、側臥位となったのち、圧抜きをします。特に荷重のかかる下側の肩、骨盤、大転子はしっかりと実施しましょう。最後は姿勢の調整を行います。頭部では耳、上半身は肩、下半身は骨盤の左右を結ぶ線を平行に整えます。姿勢を安定させるため、マットレスの下にクッションを入れて、身体と寝具との接地面積を増やすことも大切です。褥瘡好発部位への圧の最終確認も行いましょう。

【背上げのポジショニング】
仰臥位と背上げ時の圧の違いから、特に仙骨、尾骨、踵骨(しょうこつ)に褥瘡リスクが高まるため、注意が必要です。背上げの方法として、まずは背上げを行う前の開始肢位を整えます。ベッドの回転軸と患者さんの股関節屈曲位置を合わせましょう。
次に患者さんの滑りを防ぐため、膝上げを行ってから、背上げをしていきます。もしベッドの膝上げの位置と、患者さんの膝関節の位置が合わない場合は、あらかじめクッションを使い、膝関節を軽度屈曲位としておくこと。目的の角度まで背上げを行ったら、腹部の圧迫を避けるため、角度によっては膝上げを少し下げましょう。圧抜きを行い、圧迫やずれを取り除き、さらにクッションを使って、上肢や足部を支えるなど、姿勢を安定させます。最後は側臥位と同様に、耳の位置や骨盤の位置を確認し、可能な範囲で姿勢を平行に整えましょう。

【次は背上げ時のポジショニングです】
仰臥位と背上げ時の圧の違いから、特に仙骨、尾骨、踵骨(しょうこつ)に褥瘡リスクが高まるため、注意が必要です。背上げの方法として、まずは背上げを行う前の開始肢位を整えます。ベッドの回転軸と患者さんの股関節屈曲位置を合わせましょう。
次に患者さんの滑りを防ぐため、膝上げを行ってから、背上げをしていきます。もしベッドの膝上げの位置と、患者さんの膝関節の位置が合わない場合は、あらかじめクッションを使い、膝関節を軽度屈曲位としておくこと。目的の角度まで背上げを行ったら、腹部の圧迫を避けるため、角度によっては膝上げを少し下げましょう。圧抜きを行い、圧迫やずれを取り除き、さらにクッションを使って、上肢や足部を支えるなど、姿勢を安定させます。最後は側臥位と同様に、耳の位置や骨盤の位置を確認し、可能な範囲で姿勢を平行に整えましょう。

◇栄養
褥瘡予防の栄養管理の基本は、低栄養の回避、改善です。低栄養状態を確認する指標には、炎症、脱水などがなければ血清アルブミン値や体重減少率、喫食率(食事摂取量)があります。低栄養の人のため栄養管理の方法としては、疾患を考慮したうえで、高エネルギー、高蛋白質のサプリメントによる補給を行うことが勧められています。また、口からの栄養補給が難しい人には、必要な栄養量を経腸栄養(鼻や胃にチューブを挿入して流動物を補給する)で補給しますが、それも困難な場合は静脈栄養(点滴)による補給を行うことが推奨されています。

◇スキンケア
褥瘡になりやすい皮膚の状態としては、尿や便失禁による湿潤(皮膚のふやけ)があります。排泄物が付着した状態が長時間続くと、皮膚への刺激が加わり皮膚トラブルから褥瘡発生につながりやすくなります。排泄物から皮膚を守るためには、皮膚の洗浄後に、肛門・外陰部から周囲皮膚へ皮膚保護のためのクリーム等の塗布を行うことが勧められています。また皮膚の洗浄については、皮膚をゴシゴシ擦らないように優しく丁寧に洗うことが大切です。石鹸を使う場合には、よく石鹸を泡立て、十分に洗い流します。特に高齢者の皮膚は弱く、骨の突出した部位は皮膚の摩擦を強く受けやすい状態になっています。そのため、予防のためのテープ(ポリウレタンフィルムドレッシング材)やすべり機能つきドレッシング材、ポリウレタンフォーム/ソフトシリコンドレッシング材を貼ることが勧められています。また、日頃より皮膚が乾燥しないよう保湿クリームなどを塗布することが大切です。

当施設での取り組み

当施設では、日中椅子で過ごして頂くことが多いですが、同じ姿勢で座っている時間を少なくする取り組みをしています。午前中はリハビリや入浴がありますので椅子に座っている時間は自然と短くなります。また、午後はレクリエーションの合間に、体操や歩行訓練を行うようにしています。その他、体圧分散のためのクッションを多数用意していますので、褥瘡の場所や程度に合わせて使用して頂くことができます。

栄養においての取り組み事例

一人暮らしのため、3度の食事がしっかり取れていなかったために、低栄養になっていたケース。デイサービスで朝食・昼食を召し上がって頂き、夕食の宅配弁当をテーブルにセッティングすることで、栄養状態が改善し、褥瘡も改善してきた。訪問診療のドクターからも、食事を確保することで、血清アルブミン値が改善してきていると報告をもらっている。

症状をお持ちの方へメッセージ

高齢になるにつれ、痛みの感覚も弱くなってくるようで、気がついた時には褥瘡が酷くなっているケースもあります。着替えや排泄、入浴などの場面で、褥瘡のできやすい場所は常に気にして見るようにしていきましょう。